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まったりまったんこ

アルファポリスでまったり小説掲載中です。 習作短編やSS、設定の裏話やボヤキなど。 ネタバレがある場合は件名に記載します。 ジャンル:人間模様>>恋愛、ファンタジー

【SS(もはや短編?)】リクエスト「ジョーの災難」第三話

というわけでようやくヨーコ視点です。
明日完結…(ただし長い)

* * *


 終業直前にかかってきた内線は、マーシーからだった。
 忙しいところ申し訳ないが、少ししたらロビーへ降りてきてくれるか、と言う。
 理由については、ジョーにちょっとした災難があって、としか言わない。
「ワンコがどうなろうとどうでもええけど」
 ジョーは自分のことは自分で守れる人間だ。ーーうちとは違って。
「巻き込まれたマーシーが助かる、て言うなら、行かんでもないで」
 マーシーは電話口でぐ、と喉を鳴らした。図星なのだろう。うちはふふ、と笑う。
 電話口でのマーシーの声は穏やかで耳に心地好い。会話を引き延ばしたくなるくらいだが、毎回意地悪をしては電話の機会も減るだろうからほどほどにしておく。
「お礼はーーそうやなぁ。ランチデート一回で」
『無理です無理無理』
「ワンコには言うておくさかい」
『俺が殺されます』
 冗談を交わした後で電話を切り、猛烈な仕事を続けるアキちゃんの横顔に声をかけた。
「マーシーに呼ばれたさかい、少ししたらちょっと外すわ。戻ってくるさかい」
「はぁい。了解でーす」
 アキちゃんはちらりと顔を上げて笑った。
 
 さてそろそろ行くかと思ったとき、うち宛てに秘書課から内線がかかった。来年度の予算説明の日時について確認したいという。
 一度秘書課を経験したことがあるうちは、その忙しさを知っている。後で折り返すのも申し訳ないと手に取った。
 互いのスケジュールを確認しながらの電話は少し時間がかかった。あっちを確認しこっちを確認し、すり合わせた後電話を切ると、十分弱かかっている。
「行かなくていいんですか?」
 アキちゃんが言った。
 うちは時計を見て首を傾げる。
「まだ行った方がええやろか」
「安田さん、何かあったんでしょう?」
 アキちゃんはキョトンとしている。
「行った方がいいんじゃないですか。わざわざ呼ぶってことは、ヨーコさんが全く関係ない訳じゃなさそうだから、安田さん、機嫌損ねたら何するかわかんないし。お相手のーー男だか女だかわかりませんけど、その人のためにも」
 キーボードをたたきながら淡々と言う後輩の横顔に、ほうと感心する。
「よう見てるなぁ」
「私ミステリー好きなんで。考察はお手のものです」
 考察、もあるだろうが、彼女は人の機微に敏い。相手が自分の味方になるか敵になるか、ほとんど野性動物のように観察しているのをうちは知っている。ーーその明るい笑顔の奥に隠し持つ、擦り切れそうな緊張。
 ーーが、今そんなことは関係ない。うちは微笑を浮かべて嘆息した。
「せやな、ほな行ってくる」
 デスクのスマホを手に取り、ちらりと画面を見やると、マーシーからの着信履歴が数件、目に入った。なるほど、行った方がよさそうだ。
 うちは思わず笑って、エレベーターホールへ向かった。

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