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まったりまったんこ

アルファポリスでまったり小説掲載中です。 習作短編やSS、設定の裏話やボヤキなど。 ネタバレがある場合は件名に記載します。 ジャンル:人間模様>>恋愛、ファンタジー

【SS】十人十色の夫婦模様

大好きな作家さまの呟きから、妄想していたらできた拙宅の4夫婦の話を投下します。
掲載許可ありがとうございます~
長いのでご注意ください。

 ***

 友人の結婚式で、どんな夫婦でいたいかと問われた花婿は言った。
「僕は永遠に彼女に恋していたいです」
 そのとき、式場の雰囲気微妙に揺らいだのを感じて、記憶に残ったーー

 ***
 
1 政人×彩乃
 友人の結婚式があるからと、彩乃は都内の某所へ向かった。久々に会うならお茶でもしてこいと言った通り、帰宅は子供の就寝後だ。
 帰宅して入浴を済ませた彩乃に、最近凝っているらしいノンカフェインのお茶を出してやると、ありがとうと弾む声で応えて椅子に腰掛けた。
「今日の新郎がね、永遠に新婦に恋してたい、だって。素敵よね」
 私たちもそんなときがあったのよねと笑う顔は、最近よく見る母仕様のそれより若やいでいる。俺はふぅんとカップを口にしながらその前に座ると、頬杖をついて彩乃を見返した。
「……で、俺は息子に夕飯食わせて風呂入れて寝かしつけた訳なんだけど、特別なお礼とかないわけ?」
 あえての半眼で言ってみると、案の定彩乃がうろたえた。
「ご、ごめん。でもゆっくりしてきていいって言ったからーー」
 俺は口の端を上げた。相変わらず、言葉以上の意図は全く伝わっていないらしい。
「謝罪なんていらねぇよ」
 俺はコップをテーブルに置くと、身を乗り出して彩乃の頬に手を伸ばした。
「言ったろ。特別なお礼が欲しいって」
 彩乃は目をさ迷わせつつ、困った顔をしている。
「何も買ってきてないから、お礼はまた今度ーー」
「何言ってんだ」
 全っ然、伝わってねぇな。
 俺は笑って、彩乃の顔を覗き込んだ。
「ここにあるんだから必要ないだろ」
「は……?」
 何か言いかけた彩乃の唇を自分のそれで塞ぐと、彩乃が目をまたたかせる。
「で、くれんの?くれないの?」
 ほとんど顔を離さず問うと、
「……あげる」
 彩乃は赤面して応えた。
 ……いくらでも、好きなだけどうぞ。
 小さく付け加えられた言葉に、
「言ったな?」
 俺はにやりと笑って、もう一度彩乃に口づけた。
 
2 ヨーコ×ジョー
「おかえりなさい。夕飯できてますよ」
「おおきに」
 友人の結婚式から帰って来ると、エプロン姿のジョーが笑顔で出迎えてくれた。
「きっとお腹いっぱいって言うだろうと思って、軽めにしましたけどよかったですか?」
 ジョーはすっかり馴染んだキッチンで、うちのご飯を整えて持ってくる。ランチョンマットがわりに使っているお盆には、雑炊らしきものと浅漬けが乗っている。うちは微笑んだ。
「よう、気が回るようになったなぁ」
 言うと、ジョーは照れ臭そうに微笑む。ヨーコさんのためならいくらでも。と答えてテーブルに盆を乗せた。
 簡単に着替えを済ませて机についたうちの正面にジョーが座り、手を合わせていただきます、とつぶやく。
「どうかしました?」
 ジョーが首を傾げた。
「何で?」
「いや、なんとなくぼんやりしてるから」
 うちの言葉が少ないのも、ぼうっとしているのもいつものことだが、ジョーには何かと察せられるらしい。うちは曖昧に微笑みながら、あのな、と口を開いた。
「式で、新郎が、言うててん。永遠に新婦に恋してたいて」
「うっわー、それ、痛ぁ」
 ジョーは途端に表情を歪めた。うちは言われて首を傾げる。
 うちにとってはなんとなくひっかかる、という程度の感想だったのだが、ジョーにとっては明確に批判に値する言葉だったらしい。
 痛い、といえば確かにそうか。
 思いながら、薄味の雑炊を口にした。
「恋してたい、てどういう意味やろ」
 口をついて出た疑問に、ジョーは目を瞬かせる。
「え?うーん、ときめきとか、そういうのじゃないですか?……あ、ほら、裸でウロウロするなとか、平気でオナラするとか、そういうので、ときめかなくなる、みたいなーー」
「ジョーは、うちにときめかへんの?」
 別に何と言うことのない、確認のための質問は、ジョーを大変うろたえさせた。
「いや、そんなことないっすよ。毎日ときめいてますけど。でもそれと恋とは別ーーえ?あれ?ちょっと待ってくださいね。今俺よくわかんなくなってーー」
 ジョーは饒舌に話しながら、ぶつぶつと何か言っている。うちは熱かった雑炊に丁寧に息を吹き掛けながら口へと運んだ。自分の質問をすっかり忘れた頃になって、急にジョーがうちを見つめた。
「いや、俺多分、してます」
「うん?」
 レンゲの端をくわえながらジョーを見やる。
「何やったっけ?」
「いや、だから、ヨーコさんに恋。してます。俺。今も」
 ああそういえばそういう話をしていたっけ、と思いつつ、さよか、と答えると、ジョーは寂しげな顔になった。
「……それだけっすか?」
「え?」
「反応薄いっす」
 そんなんいつものことやろ。と思ったが、大型犬が目の前でうなだれている姿を目に口を閉ざす。
 手を伸ばすと、その短髪を撫でた。
「なあ、ジョー」
「はい、何ですか」
「ええんやで、うちにもっと幻滅しても」
「できないですよ」
 ジョーはくしゃり、と相好を崩し、
「俺の好きなタイプ、は、全部ヨーコさんで上書きされちゃうんですもん」
 うちは思わずぽかんと口を開けてから、小さく吐息をついた。
「……それは、難儀やな」
 言うと、ジョーは軽やかに笑った。
「それが恋ってもんでしょ」
 でも、と言葉を次ぐ。
「それで幸せなんだから、おめでたいでしょ」
 ジョーはそう言いながら、自分の膳を口に運んだ。
 うちはその姿を見ながら、何もいわずに微笑む。また一口、雑炊を口にして、
「おいしいなぁ」
「そうですか?よかった」
「ーーおおきに、ジョー」
 ジョーは嬉しそうに笑った。
 
3 孝次郎×和歌子
「……て新郎が言っててさ、大丈夫かなこの人、って思っちゃった」
 夜中に帰ってきた夫に、先日参列した友人の結婚式の話をした。警察官の夫とは基本的にすれ違い生活で、会えたときにはまとめて話をするのが習慣になっている。
「いかんの?」
 孝次郎くんからの応答は単純だった。私が作った夕飯を口にしながら目だけをこちらに向けて来る。仕事中は鋭いその目も家ではどことなく丸みを帯びて見える。
「……いや、だってさ」
 素朴に聞かれると、ちょっと戸惑ってしまう。説明しようとして、友人の晴れ舞台に水をさすことへの罪悪感も手伝い言葉を留める。
 手元の洗い物に目線を落として、気まずさをごまかした。
「まあ、悪いわけじゃないけど」
 いろいろあるじゃない、結婚すると。
 と、言おうか迷っているうちに、孝次郎くんは言った。
「俺は、今でもしてるで」
「ーーは?」
「和歌子に、恋」
 怪訝さと驚きの入り混じった顔のまま孝次郎くんを見やると、思いの外まっすぐな視線が返ってきた。
 ーー久々に会うときに、その視線は。
 先ほどと違う気まずさに、また手元へ視線を戻す。
「ごちそうさん」
 孝次郎くんが手を合わせた気配がした。食器を洗い場へ持ってきてくれる。
「一緒に洗っちゃうから、ここ置いて」
「うん。おおきに」
 孝次郎くんは私の指示通りの場所に空いた食器を置くと、そのまま私の身体を後ろから抱きしめた。
「……洗い物してるんだけど」
「せやな」
「……お風呂、まだでしょ」
 言うとようやく離れたが、未練ありげな様子に私は苦笑した。
「疲れてるんでしょ」
「うん。だから」
 和歌子が欲しい。
 孝次郎くんは言って、私の唇をわずかに外した頬に口づけた。
「風呂、済ませたら」
 孝次郎くんは私から離れながら言った。
「寝たらあかんで」
「やだ、寝る」
「寝てても襲うけどな」
「合意ないセックスは犯罪でしょ」
「合意、してくれへんの?」
 またじっと見返されて、目を逸らす。
「そのときにならないと、わかんないわよ」
 返した言葉は精一杯の強がりだ。
 孝次郎くんは目を細めて笑うと、風呂へ向かった。
 私は柄にもなくほてった頬を持て余して、唇を尖らせながら洗い物を続けた。
 ーーちょっといい匂いのハンドクリームでもつけようかな。
 そんなことを思う自分が、チョロい女に思えて、ちょっとだけ不満だけど。
 
4 隼人×香子
「新郎が、新婦に永遠に恋していたい、って」
 都内で開かれた友人の結婚式の帰り。妊婦の私につきそってくれた隼人くんは、引き出物を含めた私の荷物を軽々と持って歩いている。
 私が言うと、隼人くんはいつも通りの穏やかな目を私に向けた。
「なんか、隼人くんが言いそうだなと思っちゃった」
 隼人くんはそれを聞いて、む、とした顔をした。普段穏やかなのに珍しい。そう思っていると、
「言わないよ、そんなこと」
 隼人くんが唇を尖らせる。
 私がきょとんとしていると、
「だって、俺の気持ちは恋じゃないもん」
 隼人くんは改まった顔で私に手を伸ばした。
「愛してるよ、香子」
 肩を抱きながら言われて笑う。
「ああ、そういうことね」
 簡単に流されてショックだったらしい。隼人くんはちょっと悲しそうな顔になった。私はまた笑い、その背中に片手を伸ばす。
「私も愛してる」
 隼人くんの顔は途端にぱっと華やいだ。嬉しそうな笑顔は少年のようで、赤信号で立ち止まった私のお腹に片手を添える。
「聴いた?お父さんとお母さん仲良しだから、安心して産まれておいでね」
 私は笑った。
「産まれてきたら、この子の方が大事かも」
「しばらくは仕方ないんじゃない」
 隼人くんは言いながら顔を上げる。
「でも、この子が手を離れたらちゃんと香子ちゃんの気持ちが戻ってきてくれるように、俺もがんばらないとね」
「ふふ」
 前向きなコメントが隼人くんらしくて笑うと、私もお腹に手を添える。
「パパが子育てがんばってくれると、愛情が回復しやすいらしいよ」
「そうなの?じゃあ、この子と仲良くならなきゃ」
「そうだね」
 話しながら二人で想いを馳せるのは、小さな家族を迎える日。でもまだうまく想像できないや、と首を傾げる隼人くんに、私もだよと頷いたとき、
「あっ、動いた」
「ほんと?」
 腹部に感じた応答は、赤ちゃんも聴いている合図だろうか。二人で顔を見合わせて笑った。
 
***
 
なお、政人たちはただいちゃついてるだけじゃない!と思ったりもしますが仕様です。え?本編では大していちゃついてないのに激甘?仕様です!(笑)
それにしても香子と隼人の優等生ぷり。
サリーたちのパターンも考えましたが本編との兼ね合いで記載は控えます。

吐き出したらすっきりしました!デトックスデトックス!ありがとうございましたm(._.)m

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コメント

1. 最高だ!

松丹子様

お邪魔します。こちらのSS美味しく頂きました。

スライディング土下座でありがとうございます!

男性の思考とアプローチ、勉強になります。
同じ「お題」でも全く別のテイストに楽しませて頂きました。
キャラが違うのだから当たり前だと仰られるかもしれませんが、私にとっては設定や性格を生み出すのは簡単ではないので尊敬しております。

そして未だヨーコさんの余韻に浸り続けているので、やはりここでもイチオシのヨーコ×ジョーで悶絶です。

ハァ、堪りません。
良いもの見せて貰ったぜの勢いで…ご馳走様でしたっっ!

2. こちらこそ、ありがとうございました!

こんばんは!ノリと勢いで押し付けがましかったと反省しています(が後悔はしていません…!笑)
一投石して、キャラクターが動くに任せると意外と十人十色の夫婦模様になりました。時系列バラバラですが、楽しかったですー

やっぱりヨーコ推しですか!うふふ。嬉しいです。
ヨーコはちょっとおっとりしてて、ジョーは突っ走るので、すれ違って互いにそれに気づいてすり合わせる、という作業を事あるごとに繰り返している二人なんだろうと思います。それが書いていて楽しいのですが。
二人の夫婦模様はまた(気分転換に)書きますねー

わざわざご訪問くださりありがとうございました!